小山 晶子

Oyama Seiko
教授 政治学博士
小山 晶子
Oyama Seiko
教授 政治学博士
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国家から人へ

修士課程はイギリスでEUについて学び、その後フランスで博士課程を終えました。当初は国家間の関係性に着目する国際政治学を専攻していたのですが、次第に国際的な問題と国内の政策の関連へと関心が移っていったんですね。それからは人にインタビューをしたりとか、政策が人へ及ぼす影響を分析するような研究に変わっていきまし た。

国民教育政策というのは、国が国家を形成する際に、どのような国民や市民を形成するかという政治的意図が反映されてしまう側面があるので、すごく政治学の研究対象として面白いんですよ。例えばフランスの国民教育政策を見た

としたら、そこには「どんな価値観を持ち、どんな国民を作るか」という目的が政策に反映されているんですね。「どのような国民を育成してきたか」という教育政策を背景として、「国民」と「それ以外の人たち」を分けてしまうことに影響も及ぼしているわけです。イギリスでは人種の違いによる差別への批判から、エスニシティや第一言語ごとにグループ分けして統計も取っているのですが、日本の場合は国籍別で外国人か日本人かを区別しています。日本では国籍や血統にこだわる傾向がみられますよね。

どうにか捻出して、捻出して。

政治学の博士号を取得するのにとても長い時間がかかりました。その間、結婚や出産というプライベートな環境の変化もあり、日本やサンフランシスコで生活をしていた時期もありましたけど、無事に博士課程を修了することができました。日本に帰国してからは、どの学会でどのように研究を発表していけば良いか分からないと感じたこともありました。そんななかで、私の研究に興味や関心を示してくださり、話を聞いてくださった先生方がいらっしゃって、少しずつ日本で研究を続けていく可能性についてアドバイスを頂けるようになりました。専門とは離れていても語学力を活かしてフランス語の授業を担当したり、あるいは英語で国際関係や移民について授業をするというかたちで非常勤講師を担当させていただきながら、教育の現場での経験を積み重ねつつ、論文も執筆しました。

3年間は非常勤講師として働いていまして、月曜日から金曜日まで毎日違う大学に行っていました。毎日職場が変わるので方向を間違えるんですよ(笑)。「今日は月曜だからあっちの電車だった!」ということがよくありました ね。1日で2つの大学をはしごしたり、体力的にも厳しいスケジュールでした。論文を書く時間はどうにか捻出して、捻出して。自分の部屋の床で寝ちゃってることがよくある状態でしたね(笑)。とにかく論文を書かないと後につながらないと思っていましたので。

娘と二人で名古屋へ

2013年の10月に名古屋大学国際教育交流センターに就職が決まりました。協定校からの留学生を受け入れる仕事が中心で、年間に多様な国々から100人程度の留学生がやってくるんですけれども、そういった学生を受け入れる前の書類を受け付けたり、到着してからの履修相談や生活全般に関する相談に乗ったりしていました。日々使う言語は主に英語でした。フランス人の学生が、少しフランス語で話しかけてきたりということはありましたが、1年半はほぼ英語でしたね。センターで担当する授業は、主に留学生が中心でしたので、日本人の学生にも自分の留学経験や海外で修得したことを伝えて海外留学への背中を押したいという気持ちや、自分のゼミ生も持ってみたい、という希望は高まっていきましたね。

名古屋での就職が決まりましたが、主人は関東圏で仕事をしていましたので一緒には名古屋にいけなかったんです。息子は、ちょうど小学校に入学したばかりだったので、実家から小学校へ通い続けるという選択をしました。というわけで、娘と二人で名古屋へ赴任。名古屋大学では、単身でお子さんを育てながら教鞭をとっていらっしゃる先生方がいらっしゃって、革新的なネットワークも形成されていたんです。早速私も参加させてもらい、建設中の研究棟に子どもと一緒に仕事ができるスペースの設置について、 色々と議論させてもらいました。病児保育の施設を教えてもらったり、貴重な情報やアドバイスももらえる活気的なネットワークでした。

「境界」を超えていけるような力

「グローバル」について考えると、「グローブ=地球」ですから形容詞的には「地球規模的な」ということになると思います。使い方はグローバル人材とかグローバル企業とか色々。意味としては「国の枠組みにとらわれない」ことを指すと思うんです。その際に「国境」を越えられるか越えられないかっていうのは、グローバル人材としてはあまり関係ないんじゃないかなと私は思っています。というのは、日本国内の社会にもグローバルな側面があるので、
「そういう側面に対応できる人かどうか」っていうのはあると思います。でも大事なことは、あらゆる挑戦に目を背けずに、その挑戦や障壁を乗り越えていける自信がある人じゃないかなと思うんですね。そこにはもちろん日本という枠組みにとらわれないというのは入ってくると思いますけど。物理的な国境というよりも、「人と人」あるいは
「社会と社会」を隔てているような「境界」を超えていける力を持つ人こそがグローバルな人じゃないかな、と思うんです。

探究心と寛容性

学生にはコミュニケーション能力を磨いていただきたいと思っています。それは今後社会に出ても、どんなことにでも通じると思います。コミュニケーション能力は必ずしも語学能力を指すのではなく、自分と異なる価値観を認め て、互いを尊重し、異なる意見でも伝え合い話し合うことができること。お互い共存するための策とも言えると思います。話し合いの場を持って、何か一つの合意に到達できるような交渉力が必要です。そういった力をつけられるように、いろんな価値観を持った人とどんどん接して意見交換をして欲しいですね。その際に自分のアイデアや意見が魅力的なものとして訴えられるような勉強をしてほしいと思うんですよね。

色んな人に会って色んな人の話を聞くっていうのが一番勉強になりますよね。もちろん書かれたものや描かれたものから感銘を受けることも多い。と同時に心に残る、身体に残るような言葉、感動というものは、人からもらうことも多いですよね。ですからそういう感動を大切に、糧にしていってほしいと思っています。いろんな価値観を持った人といろんな話をする寛容性や、自分がおもしろいと思ったことをとことん突き詰める探究心、そういったものを両方持ち合わせて「人とつながっていく」ことが大切なのではないかなと思います。
(2016年4月5日 聞き手:橋口博幸 [ 2023年10月更新 ] )

小山 晶子
Oyama Seiko
教授 政治学博士
研究テーマ:移民と社会統合
専門分野:EU研究、政治社会学

教員・研究者一覧

  • アルモーメン アブドーラ

    Al-Moamen Abdalla
    教授 日本語日本文学博士
    研究テーマ異文化コミュニケーション(日本とアラブ)、翻訳通訳の諸課題
    専門分野言語文化学、翻訳通訳&対照言語学
  • 荒木 圭子

    Araki Keiko
    教授 法学博士
    研究テーマアフリカ(系)人の脱国家的連帯
    専門分野アフリカ研究、アフリカン・ディアスポラ研究
  • 内川 明佳

    Uchikawa Sayaka
    准教授 応用人類学博士
    研究テーマ子どもの労働、教育開発、外国人住民の暮らしと子育て、支援
    専門分野教育人類学、文化人類学
  • 小貫 大輔

    Onuki Daisuke
    教授 教育学修士、ソーシャルワーク修士
    研究テーマ海外にルーツを持つ子どもたちの教育
    専門分野国際協力、ブラジル研究、性教育、性と生殖の健康・権利
  • 小山 晶子

    Oyama Seiko
    教授 政治学博士
    研究テーマ移民と社会統合
    専門分野EU研究、政治社会学
  • 金 慶珠

    Kim Kyŏngchu
    教授 言語学博士
    研究テーマ朝鮮半島と日本
    専門分野社会言語学、メディア論
  • 貴家 勝宏

    Sasuga Katsuhiro
    教授 国際学博士
    研究テーマグローバリゼーションと経済地域統合
    専門分野国際政治経済学
  • タギザーデ ヘサーリ ファルハード

    Farhad Taghizadeh-Hesary
    准教授 経済学博士
    研究テーマエネルギー政策、エネルギー経済学、グリーンファイナンス、マクロ経済学、日本・アジア経済学
    専門分野経済学
  • 田辺 圭一

    Tanabe Keiichi
    准教授 国際関係学修士
    研究テーマ内戦の要因分析、国内紛争後ガバナンス
    専門分野平和構築、人間の安全保障、国際開発論
  • ファーデン マルガリット

    FADEN Margalit
    准教授 法務博士
    研究テーマ国境を越える法律的な課題
    専門分野国際法・国際私法、異文化間コミュニケーション
  • 吉川 直人

    Yoshikawa Naoto
    教授 政治学博士
    研究テーマ持続可能な社会と経済システム
    専門分野国際開発理論・国際関係論
  • 和田 龍太

    Wada Ryuta
    准教授 博士(国際政治経済学)
    研究テーマアメリカ・イギリス外交史
    専門分野国際関係論、国際安全保障論、国際関係史
  • 李 優大

    Ri Yudai
    講師 法学修士
    研究テーマロシア・中東関係
    専門分野ソ連・イラン関係、ロシア外交史、中央アジア近現代史、国際公法
  • 田中エリス 伸枝

    Tanaka-Ellis Nobue
    准教授 応用言語学博士
    研究テーマテクノロジーと教育環境、リーダーシップ、言語教育と権力
    専門分野コンピュータ支援言語教育、異文化コミュニケーション
  • 衛藤 安奈

    Eto Anna
    准教授 法学博士
    研究テーマ中国の近代化
    専門分野中国近現代史
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