ファーデン マルガリット

FADEN Margalit
准教授 法務博士
ファーデン マルガリット
FADEN Margalit
准教授 法務博士
ビデオ メッセージ

ビデオ メッセージ

ビデオ メッセージ

ビデオ メッセージ

法律の学校へ

生まれはアメリカ合衆国です。シカゴの少し北の郊外で生まれ、6歳の時に引っ越し、そこで育ちました。教養学部の学部生時代は政治学とロシア研究を学びました。

モスクワへ海外留学をしました。18歳と19歳の夏にはシベリアで働き、その後モスクワ国立人文大学(Russian State University for the Humanities[RGGU])でロシア研究を専攻しました。卒論はロシア語でチェチェンのことについて論じました。

私はアメリカとロシアで二つの学位を取得したので、論文は英語で政治学について書き、ロシア語でチェチェンについて書きました。そこでチェチェンにおける人権について興味を持ち研究していたので、大学卒業後、法律の学校へ進むことにしました。

モスクワだけでなくロッテルダムのエラスムス大学(Erasmus Univercity)に留学しました。そのため合わせて1年間をアメリカ国外で過ごしています。私の父はアメリカ出身ですが母はオランダのアムステルダム出身でしたので、オランダの大学を選びました。

司法試験

大学を出て日本に来てから、2年間ベルリッツ(Berlitz)で英語講師として働きました。ロー・スクールに行くための準備期間です。それからアメリカのロースクール(Boston University School of Law)へ行くため、ボストンに引っ越しました。3年間ボストンで法律を学び、その後1年はシンガポール国立大学(National University of Singapore)で学びました。ここでも2つの学位を同時に取りました。法務博士(Julis Doctor)をボストンで、シンガポールでは法学の修士号(LL.M.)を取りました。

ボストンで博士課程をやり、シンガポールで修士をとっているのでおかしく聞こえるかもしれません が、アメリカにおいて法学の修士号は専門分野について学び、博士号はより多方面に活用でき、あらゆる実践的な法的事柄に対応できるようになります。

ボストンでの博士課程課程時代には中国の広州とベトナムのハノイで3ヶ月ほどずつインターンとして働き、その後シンガポールへと引っ越しました。シンガポールで修士過程として1年過ごした後、アメリカに戻りました。司法試験の準備のためです。

半年ほど受験勉強して受験しました。アメリカでは州ごとに司法試験が独立していて、州ごとの資格を持つことになります。私はニューヨーク州の司法試験を受けることにしました。試験に合格し、いくつかのアジアの法律事務所の採用試験を受けました。なぜアジアだったかというと、私のシンガポールでの修士における専門がアジア研究だったからなんです。国が離れていたので採用試験の面接はSkypeなどをつかったリモート面接でした。それで東京の法律事務所に決まり日本に来ることになりました。

ジェネラリストとして働く

日本での仕事は新鮮な、興奮するような日々でした。多くの異なる国々の、それぞれの法律が関係し合うような、面白いケースを扱っていました。それは日本の弁護士はジェネラリストであることが求められ、あらゆる法律案件を取り扱うからなんです。アメリカの弁護士は、働き出してすぐに専門性に特化することを求められ、同じ仕事ばかり繰り返します。例えば相続だけであったり、離婚だけであったり。でも日本の弁護士は全部、なんでもするんです。

(そういう日本の状況に)驚きました。そしてジェネラリストとして働く日本の弁護士事務所での仕事はとても勉強になりました。でも1年ほど働いていたら、また「教える」ということへの欲求が出てきたんですね。前に日本ではベルリッツで働いていましたし。また、以前調査アシスタントの仕事を学生時代していたこともあったので、弁護士事務所を辞めてフリーランスとしてアカデミックな活動をすることにしました。それで企業研修を中心する会社に、フリーランスとして雇われることになりました。
ここでの仕事はとても素晴らしい経験となりました。多くの企業を知ることができ、大学で働くようになった今から振り替えると、大学卒業後の様々な進路を知ることができたように思います。

毎日が旅行のよう

担当した企業は関東中にのぼり、名古屋などの中部地方もありました。いろんな種類の会社があり、いろんな産業、いろんな仕事がありました。例えば「日産」や「GE(General Electric Company)」、「豊田通商」であったり、「三井住友」などなど多種多様な企業です。

これらの企業はしばしば従業員を海外に派遣するための研修を必要とします。そのため簡単なコミュニケーションから交渉までを英語で、国際的なコミュニケーション能力を養うためのトレーニングをします。多くの場合、そういった交渉でつかわれるのは英語が主流だからです。

例えば日産に行ったとしましょう。日産のエンジニアは日常的にフランスの自動車メーカーの「ルノー(Renault S.A.)」とコミュニケーションをとらなければいけません。ですがそこにミス・コミュニケーションが起こってしまってはいけないので、そういったそれぞれの事態をシミュレーションして、体験してもらうようなトレーニングをします。

具体的には私と20人ぐらいの外国人が日産に出かけていく、という場合があります。日産には「リーフ(LEAF)」という電気自動車があり、電気自動車に関する技術はとても高いものがあります。でもそこにテスラ(Tesla, Inc)というアメリカの電気自動車関連の会社から20人くらい人が来た、という設定でコミュニケーションの状況をつくってトレーニングをする、プログラムを作成する、といったことをやっていました。

働いていた2年間は、あまりに多くの会社を担当しすぎて毎日が旅行のようでした。いつも違う場所に、違う内容をもって仕事に行き、毎日関東中を移動し続け……それはとてもエキサイティングで強烈な日々でしたけど、同時に疲れる毎日でした。だっていつだって「次はどこに行かなきゃいけない」って覚えてなくちゃいけないし、「誰々と話をしなきゃいけないんだっけ?」「何を持って行くんだっけ?」「何するんだっけ?」っていうことを考え続けなくちゃいけないんですよ……。

そんな日々を1年半から2年くらい続けてから、もっとアカデミックな安定した仕事に就きたいと思って、仕事を探し始めました。それで見つかったのが六本木にある政策研究大学院大学(National Graduate Institute for Policy Studies, GRIPS)という学校でした。そこでちょうど新しいセンター(CPC: Center for Professional Communication)を立ち上げる手伝いをすることになりました。ポリシーを作成し、コースやセミナーを設定するなど。そこで2年間働き、東海大学に移ってきました。

自然が好きなんです

前職では六本木で働いていましたので、(東海大学のある)秦野とはずいぶん異なる環境でした(笑)。フリーランス時代にあちこち移動して関東のいろんな場所を見てきました。それで理解できたことはラッシュアワーの過酷さであり、場所によって生活の上で便利で不便かであるとかいったことです。それで東京を離れ西の、湘南に引っ越そうと決心したんです。実際、今、湘南のへ引っ越し中なんです。

東京で7年暮らしました。確かに便利なんですが、湘南の方が自分の育った環境に近いですし、私は自然が好きなんです。新鮮な空気に、海や川があって、山があって、木々があり緑溢れる……そんな環境。それで東京から外に出て、湘南方面で何か仕事はないかなと思って探していたところ、東海大学での仕事が見つかったんです。

これが一つの大きな理由。そしてもう一つはもっと大きな大学で仕事をしたかったんです。GRIPSは全部で400人しか生徒がいません。それに多くの学生にとって1年しかカリキュラムがないので、いろんな多様な人たちと知り合う機会にはなりますが、学生たちのことをある程度の長い期間をもって接し、知り合うことは難しいんです。それで学生たちとゆっくりと接することができ、その成長や教育といったものに携われる環境を求めていたんですね。それで自然が豊かで、規模の大きな学校で、生徒と向き合えるところはないかな……と思い探していたら、東海大学と出会えました。

これらが東海大学で働くようになった大きな理由ですが、実際来てみるともっと他にもユニークな側面があることも分かってきました。例えば東海大学の所有する(海洋調査研修船)「望星丸」を活用した様々なエクスチェンジプラグラムがあったり、デンマークとは歴史的にもつながりがあるなど、スカンジナビアの国々と深い関係にあります。そこには私のオランダでのバックグラウンドが活用できるのではないかなとも思います。

生活の質

私は、日本は生活の質が高いと思っています。それがこの国にとどまり、今後も生活していきたいと思う一番の理由です。例えばアメリカは日本に比べて車への依存がとても高い国です。日本では公共交通機関が発達しています。また、政府による家族へのサポートが手厚いという印象があります。アメリカでは出産・育児休暇は法律では認められていませんが、日本では法定休暇として認められています。アメリカでは企業それぞれの対応に頼るしかありませんので、場合によっては休暇が認められないということもあります。

アメリカの友人たちは子どもの世話や親の世話などと仕事をバランス良く両立できないと悩んでいます、日本も難しいと思いますが、アメリカよりはマシだと感じています。相対的なものですから日本もアメリカもお互い良い面、悪い面あると思います。アメリカでは医療保険も保障されていません。ヨーロッパのオランダのようにより保障されている国もあると思いますが、私はアジアに特化した勉強をしてきたので、アジアで生活の質が高いところを求めると日本しかありませんでした。

いま、江ノ島と鎌倉の間の稲村ヶ崎というところに家を建てているところなんです。2~3年かけて探しました。空気が綺麗で職場から遠すぎず、山や木々、海があって、ハイキングなどのスポーツも可能なエリアはないものかと、いろんな場所を見て探したんです。ようやく素敵な場所を見つけることができて、家を建てるにあたって自分たちでデザインしました。デザインと言っても方向性を決めるだけですが、とても難しいですね。自分たちで間取りを書いて、建築家に依頼するというよりは職人さんと一緒につくっている感じです。台所も、リビングもすべてデザインして、時間がかかって大変でしたけど(笑)。

ちょうど先週完成して鍵を受け取ったところなんです。庭もあって、2階には二つのバルコニーとテラスがあって海が見渡せるんですよ。家の後ろはすぐ崖になっていて、ハイキングにもすぐいける環境なんです(笑)。

無知を知る

今は「異文化間コミュニケーション」というコースで「アメリカ研究」や「国際研究」という授業を担当しています。また国際学科2年生必修科目や専門ゼミ、卒論指導を行っています。

東海大学の学生たちは面白いですよ。以前働いていたGRIPSでは、大学を卒業した専門性の高い政府関係の人たちを相手にしていましたが、こちらの学生はもっと若いですし、スポンジのように吸収も早いく、アクティブ。ポテンシャルも高く、エキサイティングです。他の学科と比べても、外の世界に対して、それは国際問題や国際的な出来事に関する好奇心も旺盛だと思います。
(本を手に取りながら)これはドクター・スース(Dr. Seuss)の子ども向けの絵本です。基礎ゼミの教材にしているものです。英語にはリズムがあり、イントネーションがあるものですが、その発音の良い練習になるんです。例えば、『Oh, the Places You”ll Go!』という本の一節では

Congratulations! Today is your day!
You’re off to great places!
You’re off and away!
You have brains in your head. You have feet in your shoes.
You can steer yourself any direction you choose.

……のようにすごく良いリズムで書かれています。それに人生の目的を達成することをテーマにした本なので、内容としても素晴らしいものなんです。

学生たちには様々な異なる経験をたくさんして欲しいと思います。経験を通じて自身の無知を知るというのはとてもむずかしいことです。未知の世界に我が身を委ね、そこから学ぶという経験をして欲しいと思います。世界を広げて欲しいのです。

現在はインターネットを通じて容易に情報を得ることができます。でも実経験から得られる知識は、インターネットで受け取る情報とは大きく異なります。どうか経験を通して、「無知を知る」ための努力を大いにして欲しい。それが学生たちに望むことです。
(2017年6月27日 聞き手:橋口博幸)

ファーデン マルガリット
FADEN Margalit
准教授 法務博士
研究テーマ:国境を越える法律的な課題
専門分野:国際法・国際私法、異文化間コミュニケーション

教員・研究者一覧

  • アルモーメン アブドーラ

    Al-Moamen Abdalla
    教授 日本語日本文学博士
    研究テーマ異文化コミュニケーション(日本とアラブ)、翻訳通訳の諸課題
    専門分野言語文化学、翻訳通訳&対照言語学
  • 荒木 圭子

    Araki Keiko
    教授 法学博士
    研究テーマアフリカ(系)人の脱国家的連帯
    専門分野アフリカ研究、アフリカン・ディアスポラ研究
  • 内川 明佳

    Uchikawa Sayaka
    准教授 応用人類学博士
    研究テーマ子どもの労働、教育開発、外国人住民の暮らしと子育て、支援
    専門分野教育人類学、文化人類学
  • 小貫 大輔

    Onuki Daisuke
    教授 教育学修士、ソーシャルワーク修士
    研究テーマ海外にルーツを持つ子どもたちの教育
    専門分野国際協力、ブラジル研究、性教育、性と生殖の健康・権利
  • 小山 晶子

    Oyama Seiko
    教授 政治学博士
    研究テーマ移民と社会統合
    専門分野EU研究、政治社会学
  • 金 慶珠

    Kim Kyŏngchu
    教授 言語学博士
    研究テーマ朝鮮半島と日本
    専門分野社会言語学、メディア論
  • 貴家 勝宏

    Sasuga Katsuhiro
    教授 国際学博士
    研究テーマグローバリゼーションと経済地域統合
    専門分野国際政治経済学
  • タギザーデ ヘサーリ ファルハード

    Farhad Taghizadeh-Hesary
    准教授 経済学博士
    研究テーマエネルギー政策、エネルギー経済学、グリーンファイナンス、マクロ経済学、日本・アジア経済学
    専門分野経済学
  • 田辺 圭一

    Tanabe Keiichi
    准教授 国際関係学修士
    研究テーマ内戦の要因分析、国内紛争後ガバナンス
    専門分野平和構築、人間の安全保障、国際開発論
  • ファーデン マルガリット

    FADEN Margalit
    准教授 法務博士
    研究テーマ国境を越える法律的な課題
    専門分野国際法・国際私法、異文化間コミュニケーション
  • 吉川 直人

    Yoshikawa Naoto
    教授 政治学博士
    研究テーマ持続可能な社会と経済システム
    専門分野国際開発理論・国際関係論
  • 和田 龍太

    Wada Ryuta
    准教授 博士(国際政治経済学)
    研究テーマアメリカ・イギリス外交史
    専門分野国際関係論、国際安全保障論、国際関係史
  • 李 優大

    Ri Yudai
    講師 法学修士
    研究テーマロシア・中東関係
    専門分野ソ連・イラン関係、ロシア外交史、中央アジア近現代史、国際公法
  • 田中エリス 伸枝

    Tanaka-Ellis Nobue
    准教授 応用言語学博士
    研究テーマテクノロジーと教育環境、リーダーシップ、言語教育と権力
    専門分野コンピュータ支援言語教育、異文化コミュニケーション
  • 衛藤 安奈

    Eto Anna
    准教授 法学博士
    研究テーマ中国の近代化
    専門分野中国近現代史
PAGE TOP